全英研に参加

とても興味深かったことは、

学びの共同体としての有機的な構造を構築することだ。授業改善のために構築している学びの共同体の実際を観せていただいた。このプロジェクトに参加している先生方は、相互に刺激し合うことを繰り返し、またそのひとりひとりが様々なひととフレキシブルに繋がり合い自己研鑽を続けている。まさに、有機体のように、多くのひとが緊密に繋がりをもちながら全体を形作っている学びの共同体であった。このような有機的な構造であるためには、いくつかの条件があると考える。

ひとつ目は、この共同体のなかにマイナスの感情が受け入れられ共有されていることだ。このプロジェクトでは子どもがイキイキとした授業を行うためには、どうしたらよいかを考え悩んでいることを参加者が共に改善に向け取り組んでいる。マイナスの感情は個として存在している場合には負の側面を持っている反面、それが共同体内で共有され、対応されてことで爆発的な力を発揮する。また、逆説的に考えるならば、有機的に成長している共同体は、マイナスの感情を受け入れられる共同体である。とても温かいなあと思った。

ふたつ目は、このような共同体を陰で支えている存在である。この先生は決して横柄にならず、むしろともに活動できたことに感謝をしていた。とても素敵な先生でした。このような共同体は学校でも同じであると言っていた。この先生のクラスはとても温かいんだろうなあ、こどもはとても倖せだろうなあと思う。管理するのではなく、環境を調整する。このような姿勢が大切なのだと思う。

みっつ目は、多面的に「みる」ということである。この会の中で、実際に研修で行っているワークショップを体験した。ひとりの想いを三人が受けとめ、4人で話し合いを行なうということである。これのとくに感激したことは話し合いのなかに当事者がメタ的にトピックを「みる」ということである。三人がひとつのトピックを多面的に「み」て話していることをメタ的に「みる」のである。当事者でありながら多面的に考えられていることを多面的に「みる」ことができるのである。この場には、ひとりよがりなことは全く存在しない。誰かのためになんとかしたい!そんな想いが溢れていた。これが研修で行なわれているのである。

よっつ目は、思考プロセスを重視するということである。ある発表に「主張に説得力を持たせるための明確な根拠は何かを考えること」を大切にしていた。具体的には、子どもに「AREA」や「TOULMIN MODLE」、「考える基準の数値化」を行っていた。ある一定思考フレームのなかで多様な思考を繰り返す。フレームがあるため、全く思考が生まれないことや論点がずれてしまうことはあまりない。しかしながら、そのフレーム自体は固い鉄で出来ているのではできているのではなく、とてもフレキシブルかつとても強い分厚いゴムで出来ているようだ。ゆえに、思考の拡がりが生まれる。そして、ある会ではその思考したプロセスを「終了後に振り返り用紙に(略)記入して、プロジェクト本部に提出している」。ここで、各小グループの思考したプロセスが可視化され、大グループとしてひとつに融合されるのである。小グループのなかの相互作用が、大グループのなかで小グループ同士の相互作用を生みだすことになる。

最後に、参加しているひとがワイヤリングとリワイヤリングを繰り返し、決して閉鎖的になっていない。流動的に移動している。常にオープンで他者を排除することがない。とてもさわやかな印象を受けた。


今回は2つの実践発表を聴くことができた。この二つのことから新たに得たことも多かったが、この二つの発表を触媒にして様々なこと考えることができた。このような学びの機会をいただけたことに感謝したい。